「怖い、逃げ出したい」から「やってみよう」に変えてくれるものは?
「どう伝えれば能動的な考え方になってくれるんだろう?」
先日、コンサルテーションを行なっている最中、私の頭の中にはこのことが渦巻いていた。
【目次】
納得しない相談者
この日のコンサルティーは教育関係者。
一生懸命こちらに相談をしてくれる。一見とても熱心そうな好印象の方だ。しかし、一生懸命なのに、こちらがいくつかアドバイスをしてもそれは彼に入っていかない。
腑に落ちず、戸惑ったような、それでいて「まだ何かあるでしょ、そうじゃなくて・・・」みたいな、まだこちらが提示していない「何か」を渇望しているような懇願しているような、なんとも言えない表情なのだ。
その、なんとも言えない表情を見つめながら私は「どう伝えれば能動的な考え方になってくれるんだろう?」と必死になっていた。しかし、はたと気づいた。
彼は彼のほしい答えが既にあるのだろう。それを言ってほしいのだ、と。
怖さは人を動けなくする
では、彼のほしがっているものとは何か?
コンサルテーションに参加している他のメンバーの発言や態度、彼とのやりとりなども総合して考えた上で出た私の結論は、
「自分はその仕事をするのは怖い。避けたい。だから、他の人に肩代わりをしてほしい。そのことを正当化するようなことを言ってほしい。」
なのだった。
怖い、逃げ出したい。
とても能動的になんて考えられない彼がいたのだった。
怖さを溶かしていく
なぜ怖いのか?を尋ねていく。
彼のたどたどしい語りから出たものは、交渉相手の風貌、評判、噂などから来る「怖いというイメージ」だった。
すると、他のメンバーがポツリポツリと口を開き始める。
「それって、全部伝聞じゃない?」
「実際、話してみた?
「私は聞いているのはちょっと違うよ」
と、彼の思い込みや頑ななイメージに違う視点を与えていく。
そのことで、彼の
・怖い人だと聞いた
・怖いに決まっている
・だから逃げ出したい
・誰かに代わってほしい
という思考はほぐされ、
また、協力者も現れたことで、
・怖い人かもしれないけど、そうでない一面もあるようだ
・怖いとは言い切れないかもしれない
・一緒にやってくれる仲間もできた
・まだ怖さはあるけれど、仲間と一緒にやってみよう
に変容していった。
怖がっている人を能動的にしてくれるもの
「怖がってどうする!」
「自分の仕事だろ、責任持ってやれ!」
では、彼はますます萎縮し、逃げ出すことしか考えられなかっただろう。人の考え方や意志を能動的に変化させていくには、障壁となっているものを見過ごしたままでは難しい。
彼の「なんとも言えない」表情が、苦悶の表情になり、そして諦めたようなものに変わり、最後はさっぱりした顔つきに変化していった。
人が何かを「怖い」と思うこと自体は悪いことではないし、恥ずかしいことでもないと私は思っている。それは危険を察知するセンサーの役目もしているからだ。
ただし、そのセンサーが誤作動していたり根拠もなしに受信しまくっていると、アラート全開状態となり、「いもしない敵」にただ怯えている、といったことにもなりかねない。
そんな時に正常なセンサーとしての機能に戻してくれるのが仲間からの冷静で異なる視点と、協力の申し出なのだろう。